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心地良いか心地良くないか

  • 執筆者の写真: Ayako
    Ayako
  • 2018年6月11日
  • 読了時間: 5分

一人で旅しているとごはんを後回しにしてしまう。特に北海道で運転していると、たまにコンビニへ行って飲み物を調達したり、道の駅でその地域のアイスを食べたりはするが、いつも目的地に着くことを優先してしまい、朝ごはんを食べてから何も食べずにいつの間にか夜になっていたなんてこともよくあった。


今回初日に入った居酒屋は泊まったホテルの目の前にあったお店だ。何度も泊まったことがある釧路のビジネスホテル。毎度到着するのが遅くこのあたりで食べたことはなかったが、今回は周辺でお店を探すことにした。二つ良さそうなお店を見つけたが直感で小さなほうのお店へ行くことにした。

足寄で食べたハンバーガーが思ったよりも腹持ちがよく、まだそれほどお腹が空いていなかった。けれどこの周辺にはコンビニなどすぐに寄れるお店がない。夜中にお腹が空かないよう居酒屋で軽く食べようと思ったのだ。

お店に入るとまるで大阪のおばちゃんのような、とっても親しみやすい女性二人とお店のマスターと呼ばれている男性が迎えてくれた。 お酒が飲めないというのは居酒屋に入っていながら申し訳なかったが、食事だけしたいと伝え、メニューをもらうと目に入ったのはカニ雑炊。サラッと食べれるのでちょうどいいと思いこれを注文することに決めた。しばらくして出て来たのは一人用のお鍋にたっぷり入ったカニ雑炊。これで600円!?思わず頭の中で繰り返してしていた。


一人で食べているからかマスターもおばちゃんも度々気にかけてくれた。 「とても多く見えるけど、ごはんはお茶わん1杯分だよ。 」 そんな風に時折ふらっと来ては話しかけてくれる。決して長居ぜず、適度な距離感が心地よかった。加えてカニ雑炊の味が美味しいのはもちろんだが、その時の気分にちょうどあっていたのでより居心地がよかった。

一人で食べているともちろん放っておいてほしいときもある。けれどその晩は軽く喋りたい気分だった。一人でひたすら運転し、誰とも喋っていないと、さすがのわたしも喋りたくなる。そんなとき、こういう気遣いはとても嬉しくなった。 支払う料金が600円と思うと申し訳なく感じるほど心地良いお店で、明日も同じホテルに泊まるのならお腹を空かせてもう一度食べに来たのになぁと思った。


翌日、落石岬から弟子屈へ向かっている途中ふと先日雑誌で見たカフェを思い出した。二つ候補があり、どちらも通り道ではないかと思ったのだ。わたしの場合、滅多にごはんやさんの下調べはしない。今回はどこへ行くか全く決めておらずホテルも前日に取ったくらいだからなおさら行けるなんて思っていなかった。けれど案の定、調べるとちょうどルートの真ん中あたりにある。一つ目のお店はその日は休業日。もう一つのカフェは開いている。時間はぎりぎり、30分ほどの滞在になってしまうが、朝ごはんを食べてから何も食べていなかったので、コーヒーだけでも注文し、運転の休憩がてら休むにはちょうどいいのではと思った。

珍しいほどスムーズにお店を見つけ、やはり残り30分ほどの時間にはなってはいたが、急いでお店に入ると店内はすでに閉店間際という感じ。引き返したほうがいいのかなと一瞬思ったが、なにせ飲まず食わずの状態だったのでさすがに疲れていた。せっかく来たのだし、閉店時間まで30分あるから注文できるならさせてほしいな。そんな風に心の中で思っていると飲み物だけなら出せると言われた。お腹が空いていたので軽食はないかと聞くとブラウニーなら用意できると言われ、それを頼むことにした。

店内は静か。 テーブルは隣の人同士が見えないよう配置され、トイレの場所もわかりにくくしている。店内の内装にはかなり凝っていることが素人目にもわかるほどだった。キッチン側からも小窓が一つあるだけなので店員さんからもこちらが見えないように工夫してあった。 隣のお店では音楽と書物を扱っており、かなりのこだわりようが見えたが、音楽がかかっているとは言えこの静けさは急かされているように感じ、わたしの性格的にも閉店間際に入るものではないと痛感した。加えて運ばれてきたカフェラテはかなり熱く、通常なら喜ぶところだが、予想以上に熱かったため飲むのに時間がかかってしまった。


閉店の10分前になり、焦って最後のカフェラテを飲みほし、会計を済ませるためレジへ向かった。お店を出たのは5分ほど前だったと思う。ギリギリだけど時間に間に合ってよかった。心の中でそんな風に思い、お店の方にお礼を言いながら店を出ると、がちゃっと音がした。一秒も経たずしてカギがしまったのだ。一瞬何の音かわからずびっくりした。

わかる、わかるよその気持ち。店を閉めたいその気持ち。 けれど、せっかく初めて雑誌でいいなと思って来たお店。大阪から久しぶりに来た道東。お店を出て、扉の前にいる状態でそんな早くカギを閉めなくてもいいじゃない。 仕事は毎度定時であがりたいから気持ちはよーくわかる。けれどお店の居心地もそれほどよくなく、少し残念な印象を持ってしまった。

心地がいいか、心地がよくないかというのはかなり感覚的で不確かなものだと思う。 同じことをされても平気なこともあれば、とても気に障ることもある。 今回はお腹が空いていて、疲れていて、わざわざチェックしていたお店だったから余計にそう感じたのだろう。けれどそんな心地よさや悪さというのはほんの30分でかなり長く印象の残るものになるのだと思った。

決しておしゃれではないが居心地のよかった居酒屋と雑誌にも紹介されるようなおしゃれだけれど居心地が悪かったカフェ。もう行くことがないのならこんなところに書かなくてもいいのかもしれないが、とても残念に思えてならなかった。

美味しい、美味しくない。

高い、安い。

心地が良い、心地が悪い。

どれもその人の感覚によるからどれが良いともどれが悪いともはっきりとは言えない。

けれど、なんとなくこの感覚というのを頼りにしているわたしはものすごく大切なことのような気がしてならない。特に旅をしているときに立っているアンテナはいつもより敏感で感受性豊かだから、余計にその印象を左右するのかもしれなかった。


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