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自分の中の黒い気持ち

  • 執筆者の写真: Ayako
    Ayako
  • 2018年3月15日
  • 読了時間: 6分

ビジャソンへ到着した時、二人の日本人を見かけた。 ウユニではたくさん日本人に会ったけれど、知り合った方々は違うルートだったので、同じ列車に乗っていたことが不思議でならなかった。

ビジャソンへは予定よりもだいぶ遅れて到着したので、すぐに歩いてアルゼンチンへ向かった。とは言え、行く方向がまったくわからない私はひとまず人に聞いてみると、ここをまっすぐ行ったらアルゼンチンだよと親切に教えてくれた。

今思えばよくそんな風にできたと思うが、ボリビアーノはウユニ出発前にほぼ使い果たしていた。そんな私は列車内でもご飯が食べられず、結局ついていたパンのようなお菓子のようなものを食べた。ずっと高地で生活していると驚くほどお腹が空かず、それだけで十分だったが、同じ列車内で親切な女性が食事の時間だよと食堂車に連れていってくれたのに、何も食べられなかったのは申し訳なかった。今思えばチップ代すら持っておらず、心配性なわりにこういう適当なところが自分でも不思議でならない。

アルゼンチンへ向かっている途中男性に荷物を運んであげるよと言われた。ボリビアーノは本当に持っていなかったのでチップも渡せないし、断ったが、結局ほとんど彼と一緒に歩いていたように思う。親切心か荷物が欲しかったのかそれともチップが欲しかったのかわからないけれど、ずっと土の上をバックパックとスーツケースで歩くのは正直きつく、彼の持っている荷台に載せたい気持ちでいっぱいだった。

しばらく歩くと両替所が見えだした。アルゼンチン側へ行くと両替所がないと聞いていたので、早速替えることにしたが、ドルを扱っている両替所が見つからない。少し歩いていると、駅で見かけた日本人二人もどうやらそんな様子だった。一緒に行ってもいいかと尋ねると快くいいよと言ってくれたので、そのまま一緒に国境へ向かった。

プルママルカでクレジットカードは使えない。事前情報で見ていたとはいえ、どうにかなるだろうと思っていたわたしは、少しのドルをアルゼンチンペソへと両替した。今思えばこれがかなりの失敗なのだが、この時はまだ行ったことのないアルゼンチンの物価も現状も全く把握しておらず、少ないほうがいいと漠然と思っていた気がする。

知り合った日本人は女性一人と男性一人だった。男性とはあまり話さなかったけれど、学生で世界一周をしていてとても素敵だなと思った。もう一人の女性は夢に向かってまっすぐ進み、それをはっきり宣言している姿が印象的だった。わたしはこの時、ちょうど色んな気持ちがごちゃまぜになっていた時期で、そんな彼女を見てとても羨ましいような嫉妬に近いような気持ちになった。



旅に出てから十人十色、何も気にすることはないと進んできたつもりだったが、まだそんな気持ちになったことに正直驚いた。結局人は自分である限り、どれだけ自由気ままな旅をしたとしても、気にしないことはもともと気にならないし。気になってしまうことは頭から離れなくなるのだと思う。一時的にそういう症状はなくなるかもしれないし、時間が経てばなくなる感情もあるだろうけど、旅に出たところでそんな自分の黒い部分がなくなるとは思えなかった。

わたしは自分探しという言葉が好きじゃない。旅に出て自分を探すって何を言っているの??と思ってしまう。冷たく聞こえるかもしれないけれど、昔からずっとそう思ってきた。確かに、普段とは違うものの見方をし、知らないものに出合うことは自分の中の何かを変えること、気づかせることに繋がるとは思う。わたし自身もこの旅の途中たくさん感じたことがあり、帰ってきてから1年がたつ今もなお書きたいことがあるくらいだから、知ったことは数多くある。けれど、いきなり自分という今切っても切り離せない自分自身がここにいるのに、旅に出てそんなに変われるだろうか。ひとつのきっかけにはなるだろうけど、果たしてその効果がどれだけあるかと言われると、それだけで自分を探せるなんて思わないほうがいいよと冷たく言ってしまいそうだ。

けれど、ここまで言っていて少し矛盾するが、普段からわたしってどうしてこんな風に思うんだろう?とか、自分自身のことがよくわからなくなって、落ち着いて考えたいとか、もしくは普段から自分とよく向き合っている人は旅に出るとその効果は何倍にもなると思う。要するに自分が何を思い、何を考え、何に対して敏感に反応するか。何が好きで何が嫌いか。そんな普段少し複雑にしてしまう感情を理解しやすくする効果はあると思う。環境が変わるというのはとてつもなく大きなきっかけになると思うからだ。

--- ちょっと焦ってまわりが見えないときは深呼吸をしなさい。落ち着きなさい。焦らなくて大丈夫。

誰に言われなくても、どこかで耳にしてきた言葉たち。それができて気が休まるなら精神的に落ち込む人なんてほとんどいないし、悩んだりしない。それだけではやっていけない苦しさやつらさが人によってはやっぱり存在していると思う。けれどそんな気持ちを救ってあげられるのは自分しかない。大好きな誰かが大切な誰かが友達が、見守ってくれたり、気持ちに寄り添ってくれたり、相談に乗ってくれたり。それでも最後に抜け出して光の方向を向いていくのはやっぱり自分なんだと思う。自分のそんなねちっこくて真っ黒な部分を受け入れることは容易ではないかもしれないし、もしかしたらそんな感情にさえ蓋をして気づいていないことだってあるかもしれない。自分が自分のことをどれだけわかっているか、はっきり言える人はどれくらいいるだろう。

最近自分の嫌な感情を例えるとしたらなんだろうとふと考えてみた。すると思い浮かんだのはとってもねちっこくて、くっつくとなかなか離れられないチューイングガムみたいなしつこさで、それに加えて鎖みたいな頑固でなかなかちぎれない…そんなもののような気がした。そんなものが自分の心の中にあると思うとなかなか消えはしないと認めざるをえなくなってしまったけれど、本当は誰しもそんなものを持っているのかもしれない。

ボリビアを出国し、アルゼンチンに入国する手続きは二時間ほどかかると思っていたが、たまたまバスの集団が重なっていただけであっという間に終わった。アルゼンチンへ入国すると、三人でタクシーに乗り、バスターミナルへ向かった。ここまで30分ほど歩く予定だったので、タクシーに乗れたのはとてもラッキーだった。長旅はどこで何にお金を遣うかいつも以上に考えるけれど、二人のおかげでとても良い遣い方ができたように思う。二人とは別方向だったのでここで別れるとバスターミナル近くのお店で買ったハンバーガーを食べた。




アルゼンチンらしくお肉が豪快なハンバーガーはとてもおいしかった。短い時間だったけれど、とても印象的な日本人に出会った。二人が乗ったバスが出発し、しばらくしてからやっと来たバスに乗り込んだ。席は一番前。また一人の旅が始まった。


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